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「書道パフォーマンス」生みの親 服部一啓さんが書道を通して目指す未来

2022年10月15日(土)

初めて三島高校書道部が書道パフォーマンスを行ってから約20年。書道パフォーマンスはどうやって誕生したのか?大会が大きく成長した理由や、書道を通したまちづくりについて「生みの親」に伺いました。

三島東幼稚園の書道ワークショップにて

 紙のまちの一大イベント「書道パフォーマンス甲子園」。始まりは「地域を元気にしたい」という三島高校書道部の熱い思いでした。2008年、紙まつりのイベントの一つとして始まった大会は、回を追うごとに出場校が増加。TVで紹介されたことから全国的に話題となり、2010年には三島高校をモデルにした映画「書道ガールズ!!わたしたちの甲子園」が公開されました。
 この「書道パフォーマンス」の生みの親といわれ、1996年から10年ほど三島高校書道部を指導していたのが、現 福岡教育大学副理事の服部一啓さんです。
 「書を通して多くの人が関われるものを作りたい」との思いから生まれた書道パフォーマンス。大会を通して日本各地に広がり、今や国際的なイベントで「日本の文化」として披露される機会も増えました。
 服部さんは、この秋、四国中央市が企画した「書道文化醸成事業」の講師に就任。幼稚園児から高校生まで、幅広い年齢の子どもたちに書道の面白さを伝えます。
 現在の書道パフォーマンス甲子園について、そして服部さんが進める教育活動について話を伺うと、四国中央市ならではの「まちの魅力」が見えてきました。

  

三島高校赴任時から26年。
現在は福岡で書道教諭の育成に尽力されています。

目次

尊敬する書家に導かれ愛媛へ 服部一啓さんプロフィール

服部一啓(はっとり・かずたか)
福岡県出身。新潟県の大学で書を学ぶ。尊敬する江戸時代末~明治期の能書家、三輪田米山(みわだ・べいざん)のふるさとである愛媛県の教員として1996年に三島高校に赴任。書道部の顧問を務め「第13回国際高校生選抜書展」で史上2校目の2連覇を達成した。2001年ごろに書道と音楽を融合させた書のデモンストレーション「書道パフォーマンス」を考案。その後、2005年に福岡教育大学の講師に。
現在は福岡教育大学の副理事、書道専攻の教授として中等教育の指導者を育成している。

書道パフォーマンスはどうやって生まれた?

 書く所作を見せ、音楽に乗せてメッセージを伝える書道パフォーマンス。きっかけは、福岡で見た「カラオケ書道」だったといいます。歌い手の歌詞や音楽に合わせて書をしたためる様子を見て、「もっと書く姿にスポットを当てた見せ方ができるのでは」と感じたそうです。

第15回大会 三島高校(南海放送賞)

 歴史をさかのぼれば、詩吟に合わせて書道をする「書道吟」や、漢詩に合わせて書道をするものなど、それまでにも書く姿を見せる文化はありました。しかし、それらとは違う高校生ののびのびとした表現方法として、「高校生が音楽に乗りながらチームで一枚の作品を作りあげる」スタイルが出来上がったのです。

書き姿をパフォーマンスとして魅せる

 ところで、三島高校が第1回大会から着用し、その後たくさんの学校が本戦の正装として採用。映画「書道ガールズ」でも凛とした雰囲気を醸し出した「袴」には、こんな由来が…。

服部さん:僕自身が剣道部だったこともあり、袴を着て書けば、とても美しく見えると思ったんです。

見た目の格好良さだけでなく、剣道で大切にしている礼儀作法も取り入れました。演技の際に「○○高校です!よろしくお願いします!」で始まり「ありがとうございました!」で終わる挨拶は、今ではすっかりおなじみになりましたね。

元気な挨拶から演技スタート(第15回大会 五日市高校)

15年で大きく発展「書道パフォーマンス甲子園」の魅力とは

第15回大会 開会式

 2008年に始まった「書道パフォーマンス甲子園」。三島高校、大分高校(大分県)、五日市高校(広島県)の3校で始まった大会も、2017年、節目となる第10回大会ではついに100校を突破。2022年、15回目の開催となりました。

 服部さんは大会を振り返り、「最初の頃とは、質、考え方がどんどん変化していっている」と話します。

服部さん:大会を追うごとに進化する演技に合わせて、事務局がルールを新しく追加したり変更したりする。そうやって、決まった型で大会を行うのではなく柔軟に変化を続けていることが、マンネリ化せず続いてきた理由の一つではないでしょうか」。

第11回大会 松江東高校(帆風成海賞)
第9回大会 三島高校(準優勝) 香りの演出

 これまでの大会を振り返ると、いつの年も高校生たちのフレッシュな発想や大胆な仕掛けが満載でした。手作りの様々な小道具、バンド隊を連れての生演奏、空気砲にスモーク、香りを使った演出…。今年は歌舞伎をモチーフにした演技や、一度書いた文字を消すという表現などで観客を魅了しました。

第15回大会優勝 松本蟻ケ崎高校のスモーク演出
第15回大会 八幡中央高校のテーマは「型破り」

服部さん:未知数の発展の要素が多いことも書道パフォーマンス甲子園のいいところ。これからも進化していけると思います。

 また、服部さんは教育者として、「高校生が主体的に活動する」という点でも大会を高く評価しています。

服部さん:大規模な大会にもかかわらず、組織的に運営・経営が出来ており、なおかつ高校生が自分たちで考え行動できる『成長の場』になっているところに感心しました。

 書道パフォーマンス甲子園は、「高校生による高校生のための大会」。大会運営には約100名の市内高校生たちがボランティアで携わり、半年前から準備を行っています。記念グッズやTシャツのデザイン、当日の司会や舞台のセッティングなど、仕事は多岐にわたります。出場選手の晴れの舞台がより良いものになるよう、高校生が考え、それを市役所の事務局スタッフが支えているのです。

演技用紙の移動も高校生が行う
スタッフが一丸となって運営

学校・地域・行政・企業。「まち全体が一体となった大会づくり」が実現できていることが、今後の四国中央市にとって大きな魅力になっていくのかもしれません。

大学生も参加!「行政の本気を感じた」今回の事業への思い

 「子どもたちに、書や紙について知ってもらう機会を増やしたい」と、2022年、市が初めて開催した「書道文化醸成事業」。紙のまちの産業、文化に触れることで、ふるさとへの関心を高めてもらうことが目的です。

 市の企画に賛同した服部さんは、自身が受け持っている福岡教育大学 書道専攻の学生らとこの事業に参加。幼稚園ではワークショップ、小中学校では出前授業、高校では講演を行います。

 紙のまちの文化として、書道パフォーマンス甲子園が「書道部員だけが、一部の関係者だけが盛り上がる特殊なものになってはいけない」と考える服部さん。今回の事業では、多くの子どもたちに体験してもらい、少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいと話します。

服部さん:「伝統」はしっかり決まった形式が受け継がれていくこと。それに比べて「文化」は流動的で、その時その時の良い状態のものが根付いていくこと。文化は人が作っていくものなので、例えば今回の活動を通して子どもたちが家庭で話題にしてくれるだけでも嬉しいです。書道文化の話が家庭内で生まれることが、四国中央市の文化的な発展にもつながるのではないでしょうか。

三島東幼稚園でレッツ書道!ふるさとの景色を描く

お手本を見せて内容を伝える

 10月5日、事業の第1弾として、三島東幼稚園で幼児向けのワークショップが行われました。3m×4mの用紙に、四国中央市をイメージした海と山の景色を描き、最後に園児たちが筆を使って「みしまひがしようちえん」と書きます。

服部さんの研究室「トリッピーズ」(左端が卒業生)

 この日は服部さんの研究室から学生3名、そして研究室の卒業生1名(高校の書道教諭)が参加。子どもたちに書き方を教えながら、墨と筆を使ったアートを作りました。
 筆で用紙のふちをなぞったり、ローラーで海を塗ったりと、子どもたちは両手も色にまみれながら制作。スポンジを使って「よ~いドン!」の掛け声で一斉に塗っていくと、あっという間に緑が鮮やかな山々が出来上がりました。

筆で線を引いてみよう
ローラーで海を描こう

 海や山を照らす太陽には、手漉き和紙を使用。これは三島高校書道部OB 大西満王さんが開いた工房「多羅富來(たらふく)和紙」のものです。食紅を使ってピンク色に仕上げています。

淡いピンク色の多羅富來和紙

 最後に、墨を使って筆で文字を書きました。下書きしてあるひらがなの上を、筆でなぞっていきます。「上手だね!」「できたね~!」と声掛けをしながら学生たちがサポート。全員が文字を書き終わりました。

 その後、魚のイラストを貼って、ついに完成!お手本よりもさらにカラフルでにぎやかな作品が出来上がりました。

完成した作品に拍手!

 完成した後、子どもたちからは「字を書くのが楽しかった!」「太陽を作るのが楽しかった!」と次々に感想が。

服部さん:小さい時に触ったものや感じたことは記憶の中に残り続ける。書道文化の裾野を広げるためには大切な活動だと思います。

 参加した福岡教育大学4年生の竹林さんにもお話を聞いてみました。

福岡教育大学書道専攻4年 竹林真愛美さん

竹林さん:大学では中学生・高校生の指導の仕方を教わっているので、どう声掛けをすればいいか考えながら幼稚園の子たちに接しました。自分が思っているよりも色々なことが出来る年齢なんだと感じました。

 「書道はいろんな表現方法があるのが面白い」と話す竹林さん。幼いころに観た映画「書道ガールズ」で服部さんを知り、大学を決めたそうです。授業で印象深いのは「文字を書く上での心構え」や「人間性が文字にも表れる」という教え。書の技術だけでなく表現者としての考え方なども勉強になっているといいます。
 来年の春からは、高校の書道教諭として高知県で働く予定とのこと。目標は服部先生のように、文字を通して色んな表現活動ができることを伝えていくことだそうです。

集中!熱中!夢中!三高生に贈った『傳』

 この日の午後からは、「書道パフォーマンスが導いたもの」という演題で、三島高校の体育館で講演を行いました。

三島高校1年生が講演を聞いた

 かつての勤務校で、高校生たちに熱いエール。

 「『集中・熱中・夢中』し、何かに没頭できることを見つけてほしい」、「やらされてるからやるんじゃない」、「自己形成のために学んでいる」ということを心掛け、豊かな高校生活を送ってほしいと話しました。
 最後には、1年生全員に1枚ずつ書をプレゼント。三島高校時代の楽しかった日々を思い出し、『傳』(つたえる)という文字を書いたそうです。書は誰かに伝えるためにしたためるもの。服部さんが講演で伝えたことが、この学校で、まちで、さらに伝わっていきますように。

三島高校での思い出 「真鍋淑郎氏からの言葉に感激」

 昨年、ノーベル物理学賞を受賞した三島高校出身の真鍋淑郎さん。服部さんが三島高校の教員だった時、真鍋さんが講演を行いました。

服部さん:1998年の開校記念講演の題字は、私が書いたんですよ

三島高校に保管されていた当時のビデオを見てみると、壇上で講演をする真鍋さんのそばに力強い「地球温暖化の研究」の文字が。

高校時代の話や研究について話す真鍋さん
講演の様子(1998年・三島高校)

 「真鍋先生から直接、題字についてお褒めの言葉をいただいて嬉しかった」と服部さん。既に当時からアメリカで研究を行っていた真鍋さんにとって、服部さんの思いのこもった書は、懐かしく、深く印象に残ったのかもしれません。

服部さんにとっての「書」とは

 高校教諭時代は書道部顧問、現在は書道専攻の教授として、学生たちと書道を通して関わってきた服部さん。自身にとって「書」はどんなものか伺いました。

服部さん:「豊かに生きる」ということですかね。

「書道を楽しむ気持ち」を大切に

 服部さんにとって幸せに生きることは、書道に打ち込んだり、学生とともに時間を過ごすこと。「書道を通して人と関わりながら、一緒に何かしていくことが好きなんですね」。
 あまり作品展や大会などの技の優劣にとらわれ過ぎず、「自分がどう思うか」を軸に進んでほしいと話します。

服部さん:芸術を楽しむ気持ちや「どうすれば心豊かになれるか」ということを忘れないでほしい。子どもたちにも書道を通して「豊かな人生を送ってほしい」と思います。

【Information】
11月12日には事業の締めくくりとして、地域の人向けに書道ワークショップを開催予定です。興味のある方はぜひご参加ください。(詳しくは11月の市報に掲載予定)
※要予約制
申し込み先:書道パフォーマンス甲子園実行委員会事務局
 電 話 :0896-28-6037

◆服部さんのインタビューの様子は後日コスモスチャンネルでも放送します。ぜひご覧ください。

ワークショップ&講演会の様子はこちらをご覧ください↓

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