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バスケ元日本代表の市職員 近藤楓さん 「経験生かし、ふるさとへ恩返し」

2024年6月3日(月)

2016年リオ五輪で女子バスケ日本代表として活躍した近藤楓さん。
現役引退後にセカンドキャリアとして選んだ道は、ふるさと・四国中央市の職員でした。
「大好きなこの街に恩返しがしたい」自身のキャリアを活かした新たな挑戦とは。

プロフィール


近藤楓(こんどう・かえで)

四国中央市土居町生まれ。身長173cm。
小学1年生でバスケットボールを始める。ポジションはフォワード。3ポイントシュート・試合の流れを把握した献身的なプレーが強み。

土居北ミニバス→土居中学校→新居浜商業高校→大阪人間科学大学→トヨタ自動車(5年)→デンソー(3年)

2016年にはリオオリンピック女子バスケットボール日本代表に選出され、6試合すべてに出場。
同年に四国中央市民大賞を受賞。
2022年に現役引退を発表し、2023年からは四国中央市職員として働いている。


「ミニバスのみんなで観たプロの試合」にあこがれて

 

土居北ミニバス時代の近藤さん(「今、この人に会いたい」より)

叔母が実業団の選手だったこともあり、幼いころからバスケットボールという競技が身近にあったという近藤さん。小学1年生の時に土居北ミニバスに参加し、すぐにその面白さに魅了されました。

「とにかくバスケットボールが大好きな小学生。ずっとバスケをしていました」

仲間たちと楽しみながら切磋琢磨していく毎日。そんな中、チームで観に行ったWリーグ(日本女子バスケの実業団のトップリーグ)の試合が近藤さんに大きなインパクトを与えます。

「高学年の時に、今治で初めてプロの試合を観ました。トップレベルのプレーを間近で見て、すごい!と思って。そこから更にバスケにのめりこんでいきました」

プロの試合の映像を何度も観たり、プレーを真似したりと、ボールを持っていつまでも練習を続けた小学生時代。大人になってもバスケをしていたい、との思いから卒業文集の「将来の夢」の欄には『バスケットを続ける』と書いたそうです。
  

土居北ミニバス時代の近藤さん(「今、この人に会いたい」より)

進学した土居中学校で入部したのは、もちろんバスケットボール部。近藤さんは、「しんどいけど楽しかった」と笑顔で振り返ります。
とにかく走り、練習、練習、練習の日々だったといいますが、チームメイトと声を掛け合って乗り越えた、かけがえのない時間。厳しい練習の中でも、競技の面白さを感じた3年間でした。

また、高校生との練習試合が多く「実力が上の相手とどう戦えば勝てるのか」を考えながらプレーする経験をしたことで、強い相手に立ち向かう心構えも備わったといいます。

   

土居中学校時代の近藤さん(「今、この人に会いたい」より)

その後、叔母の出身校でありバスケットボールの強豪校として知られていた新居浜商業高校へ進学。求められるレベルが高く、ひとつひとつのプレーを細分化して練習しました。

「へたくそなら落ち込んでいる暇はない。練習するしかない」

くじけそうになる時は、部活顧問のこの言葉を反芻し、ひたすら努力を続けた高校生活。
この経験が、“何度でも立ち上がる『雑草魂』と『謙虚な気持ち』のマインド” 近藤さんが人生の軸として今も大切にしている考えを生み出しました。
勝利のために全力でトレーニングを積み重ねたことで、高校3年生の時には県の優秀選手に選出。新潟国体に愛媛県代表選手として出場しました。

全国、そして世界へ!ふるさとが湧いたリオ五輪

 
高校卒業後は関西の大学に進学し、さらにバスケットボールに向き合った近藤さん。4年生でキャプテンに就くも、チームがなかなか勝てず、個人としてもスランプに陥ることに。もどかしい我慢の期間も経験しました。

大学卒業後の2014年には、トヨタ自動車アンテロープスへ入団。1年目からレギュラーを掴み、2年目にはユニバーシアード国際大会に出場しました。この世界大会の活躍により近藤さんは日本代表候補に選出。オリンピックという大舞台が一気に現実味を帯びることになります。

ユニバーシアードでの近藤さん(「今、この人に会いたい」より)

代表候補は24名。しかしオリンピックに出場できる選手数は12名。
日本代表候補となった近藤さんは、強化合宿で他のメンバーとともに世界と戦うためのハードワークを続けました。

「4年に1度しかないオリンピック。こんなチャンスは二度とない」

どういったプレーを求められているのか、どういった立ち回りを期待されているのか、自身を客観的に分析し、オリンピックで勝つためにチームに不可欠な存在になることを意識したといいます。

そして2016年の夏。
近藤さんは、リオデジャネイロオリンピックという世界中が注目する大会で、女子バスケットボール日本代表として出場を果たしました。

初戦ベラルーシ戦のPV会場

このニュースは市内でも大きく取り上げられ、地元出身選手の背中を押そうと初戦のパブリックビューイングには約230人の市民が駆け付け応援。かつて近藤さんが所属していたミニバスの子どもたちも、元気いっぱいにブラジルへとエールを送りました。

早朝に約230人が駆け付けた

日本は格上を相手に善戦し、1次リーグを突破。準々決勝で五輪5連覇中だったアメリカと対戦し敗れるも、8位に入賞しました。1996年のアトランタ大会以来の入賞となる快挙です。

近藤さんは6試合すべてに出場。得意の3ポイントシュートで試合の流れを変え、献身的なプレーでチームを勝利に導きました。

 

同年には四国中央市民大賞を受賞した(2016/8/27)

自身が出場したリオ五輪を振り返り「気持ちよくシュートを打てるからか、国際大会ではいつもよりシュートの確率が上がるんです」とはにかむ近藤さん。決めたいところでしっかりと得点する、その勝負どころの強さがオリンピックでも存分に発揮されました。

2021年には、東京五輪で男女通じて初のメダルを獲得した女子バスケットボール。今年行われるパリ五輪でも、その活躍が期待されます。

「日本の強みはスピード感と3ポイントシュートの精度の高さ。他の国よりも平均身長が低いものの、圧倒的なスピード感や、シュートの確率を上げることで十分世界で戦えると思います」

引退、そして新たなる挑戦

 

「プレーヤーとしてやり切ったという思いでいっぱい」

実業団選手としての8年間を完全燃焼し、近藤さんは2022年に引退を発表。
そして2023年、ふるさと四国中央市に市職員として帰ってきました。
現在は教育委員会で、社会教育に関する業務に就いており、新宮少年自然の家の事務手続きや成人式の運営などに携わっています。
 

現在は教育委員会で働く

以前から、“競技人生に一区切りがついたら四国中央市に帰ろう”と考えていたという近藤さん。「地元大好きなので、迷いなく決めました」とにっこり。

「オリンピックの時に本当にたくさんの市民の方が応援してくださったので、なにか恩返しがしたいという気持ちもありました」

大学進学でふるさとを離れ、その後も愛知県で選手活動を行う中で、自然豊かな四国中央市の風景や、人と人とのあたたかなつながりに改めて魅力を感じたといいます。

「子どもの頃、地域の人みんなに面倒を見てもらったり、見守ってもらった思い出があります。秋祭りなども地域一体となって盛り上がっているのがいいですよね」

市民のためになる仕事がしたいと考え、市の職員を志望した近藤さん。様々な部署があり、異動をしながらあらゆる分野の勉強や経験が出来ることも理由の一つなのだそうです。

「自然の家や成人式など、10代20代の方の思い出に残るイベントを運営できることにやりがいを感じています。参加した人が笑顔になってくれるよう、心を込めて取り組んでいます」

子どもたちへ楽しいバスケ体験を


市役所に就職して1年。自身の経験を活かしたバスケットボールに関する取り組みにも力を入れています。

「私が小学生時代にプロの試合を観て心躍ったように、今の子どもたちにもそんな機会を作りたい」
 

軸丸ひかる選手の講演会での対談(2023/8/5)

バスケ部を対象にした指導会や、トレーニングコーチを招いたイベント、中学生に向けての講演会、昨年夏に行われた東京羽田ヴィッキーズ所属の軸丸ひかる選手の講演会…、今年の4月には「SHIKOCHU CUP」が開催されました。
この1年間で、大小さまざまなバスケットボールイベントが市内で行われています。
 

三島南中学校「少年の日」のイベントで講演を行う近藤さん(2024/2/2)

近藤さんは市職員として個人として、これらのイベントに積極的に参加。子どもたちにバスケットボールの魅力を伝えています。またイベントでは、目標の実現に向けたプロセス、どう考えどう行動してきたか、ということも話してきました。

「現役中に貴重な経験をさせていただいたので、自分が感じたことや思いを話すことで、子どもたちにプラスになることがあれば嬉しいです」
 

初心者も参加するイベントでは、ボールの投げ方から分かりやすく伝える(2024/2/2)

教育委員会で仕事をしていることもあり、子どもたちと接するこの取り組みはとてもいい経験になっているのだとか。“バスケットボールの技術だけでなく、人としての在り方を教えることもとても重要だ”、と教育の大切さを改めて感じているそうです。

地元ならでは!人とのつながりで広がる可能性

 

オリンピアンの経験を活かし、市内で様々なバスケットボールイベントに携わる近藤さん。そこには、多くの人の支えがあるといいます。

4月に行われたイベント「SHIKOCHU CUP」もその一つ。
目玉イベントは、“昨年ウィンターカップで日本一に輝いた福岡第一高校と、インターハイベスト8の尽誠学園高校(香川)のドリームマッチ”。それをこの四国中央市で実現させました。

「昨年11月に、福岡第一高校男子バスケットボール部の井手口孝監督と選手を招いた『スキルアップクリニック』を開催した際に、4月なら試合ができますよ、とお話をいただいて。こんな機会はない!と」

近藤さんの恩師でもある市内の教諭らをはじめ、これまでバスケットボールに携わってきた市内教育関係者やバスケットボール協会らが大会準備や運営をサポート。「市発足20周年記念事業・市バスケットボール協会20周年事業」として盛大に開催されました。
全国レベルのスピード感あふれる対戦に、会場からは大きな歓声が。県大会の優勝校、地元・土居中学校の試合も行われ、集まった約2,500名が中高生の白熱したプレーを応援しました。
 

SHIKOCHU CUP(2024/4/13)

近藤さんは事務対応や会場MCのサポートなどを担当。会場の熱気を肌で感じました。

「バスケットボールをしている子どもたちが憧れのまなざしで試合を観ていて。本当に開催してよかったと思いました。記憶に残る思い出になれば嬉しいし、『あんなプレーが出来るようになりたい』『トップレベルのチームでバスケがしたい』と、夢を持つきっかけになれば最高ですね」
 

SHIKOCHU CUP(2024/4/13)

またこのイベントの成功は、教育面だけでなく、観光面でも大きな手ごたえがあったといいます。

「市外から来てくれた方も多く、バスケットボールへの関心の高さを実感しました。四国中央市という地域のアクセスの良さもすごく感じたので、今後は四国全体から来場者を集めることもできるなと思いました。“地元感”を大切にして市内の人や企業の方に協力をお願いしたことも良かった点の一つかと。当日出店していたキッチンカーも完売御礼で、スポーツ振興と合わせて地域活性化にもつなげられた取り組みだったと思います」

知ってた?実はバスケ日本代表を5人も輩出している四国中央市

 

「力になれば」と積極的に指導も行っている(近藤さん提供)

少子化の影響で子どものバスケットボール人口も減少し、合同チームで活動する部もある四国中央市。部活動の地域移行の検討が進む中、“どうすれば一番子どもたちのためになるのか”を、競技に関わってきた一人として考えているといいます。

「実は四国中央市は、バスケットボールの日本代表を私も含めて5人輩出しているんです。(合併前も含む)そんな地域は県内でもここだけ。トップレベルの選手を育てたすばらしい指導者もいらっしゃいます。そうした市の特色を活かして、今頑張ってバスケをしている子どもたち、これから始める子どもたちの背中を押していければと思っています」
 

子どもたちが生き生きと楽しめる体験を

自身が子ども時代に感じた、バスケットボールへのキラキラとした楽しい思い出。
“バスケって楽しい!面白い!” そんな気持ちを持つ子どもたちが一人でも多く増え、充実した活動ができるような地域づくりをしたい——近藤さんの思いが、この1年で大きく地域に広がっています。

関連動画

 

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2016/8/7「近藤楓選手を応援しよう パブリックビューイング開催」

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2016/8/27「近藤楓選手四国中央市民大賞授与式・リオ五輪活躍記念祝賀会」

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筆:四国中央テレビ 岡部桃子

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